演奏において「音を聴く」というのは2つのことを指しています。
ひとつは楽器から放たれた音を聴くこと。
そしてもうひとつは音を発する前に自分の中で出したい音、歌い方などを聴くことです。別の言い方をするなら「感じること」とも言えます。
音を出す前に自分の中で聴く(イメージする)ということは演奏する上でとても大切な行為です。ところが音を出すこと自体が難しい弦楽器や管楽器と違って、ピアノは鍵盤を押さえればイメージ無しでも音は出せます。その一方、ピアノ演奏は他の楽器に比べて圧倒的に音数が多く、伴奏や複数のメロディなどを同時に弾くという複雑なことを要求されます。
簡単に音が出せるのに複雑なことをしないといけない。このことが音楽的な音を出すことや歌うことを難しくしているのです。ともすると指を正確に動かすことに熱中してしまう、音のイメージを軽視して動きに囚われやすくなってしまうのです。
自分の中にまず音楽があって、そのイメージを実現させることが演奏だと言えます。
ピアノを「弾く行為」と「演奏する」ということは意味が違うのです。
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