ある程度以上のレベルの曲を練習する時に起こりがちなこんなこと、おそらく皆さん経験があるのではないでしょうか。
複雑な音の動きや微妙な音色というような細部を丁寧に弾くことを心掛けると全体像が掴みにくく、逆に曲の流れというような全体的なことを大切にしようとすると今度は細かいことがいい加減になってしまう。
演奏会でも、丁寧に弾きすぎて曲全体がよく分からない演奏、反対に全体的にはまとまっているけど細かいことは粗い演奏というのに出会うことがあります。
細部と全体的なこと、これを両立させるのは結構難しいことです。
ちょっと視点を変えたお話をさせていただきます。
私は展覧会に出掛けるのが好きなのですが、特に印象派の絵が大好きです。
光や風、空気感など実際には目に見えないものを感じさせてくれる雰囲気がきっと好きなのだと思います。
見えないものなのに見えるんです。なぜ?どう描けばこうなるの?と絵の前で近づいてみたり、遠ざかってみたり…。
すると近づいて細部を見た時と、離れて全体を眺めた時とで全く違うものが見えてきます。
同じものを見ているのに、違った見え方になるのです。
音楽でも同じようなことが言えると思います。
鑑賞する場合は全体的な印象だけ捉えたのでも構いませんが、画家や演奏家は細部を適当に済ませてしまうわけにはいかないのです。
曲を練習する際は、細部と全体像、その両極から取り組む必要があります。
ゆっくりしたテンポで音のイメージを先行させて丁寧に音を紡いでいくような練習、反対にあまり細かい事にはこだわらず(多少のミスタッチがあっても)早いテンポで通して大きなフレージングや全体の流れをつかむ練習。
その両方の練習を平行して取り組んでいるうちに、自然にその二つのテンポがだんだん近いものになってきて細部と全体的なことを両立させた演奏ができるようになっていきます。
演奏をちょっと離れて眺めているけど、細部もちゃんと見えている…そんな感覚を抱けたら、それはいい演奏ができているのだと思います。
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